合唱曲には、霊歌(spirituals)と呼ばれる音楽があります。とりわけ、黒人霊歌(ニグロ・スピリチュアル)は合唱団が好んで歌った音楽です。今はニグロという単語は差別用語の響きがあるので、単独では使われません。
奴隷としてアフリカから連れてこられた人々にキリスト教が広まります。その人々の中に生きていた独特の音楽のリズムや旋律と賛美歌が融合したものと考えられています。アメリカ黒人音楽の原点となったのが黒人霊歌です。黒人の音楽で最も古いジャンルです。今のゴスペル(gospel)ミュージックの基となった音楽です。ちなみにゴスペルとは「福音」とか「神の良きしらせ」という意味です。
奴隷としての黒人は、新大陸で過酷な労働に生きます。権利も自由も何もなく抑圧されました。その中で生まれた黒人霊歌は慰めや救いを求める証しとされます。
北大男声合唱団で歌った曲の一部を紹介します。こうした曲の主題は旧約聖書の物語からとったものが多いことがわかります。
「スウィング・ロー、スウィート・チャリオット」(Swing Low, Sweet Chariot)
「深き河」(Deep River)
「行け、モーセ」(Go Down Moses)
「アメイジング・グレイス」(Amazing Grace)
「聖者の行進」(When the Saints Go Marching In)
「漕げよマイケル」(Michael Row the Boat Ashore)
「ジェリコの戦い」(Joshua Fit The Battle Of Jericho)
「深き河」の歌詞を見ますと、黒人の生きる現実と救いの憧れが譬えのなかで示されています。
Deep river, my home is over Jordan
Deep river,
Lord, I want to cross over into campground
my homeとは、旧約聖書にある乳と蜜に満ちた肥沃なカナンの地を指します。かつて住み慣れた彼らの故郷アフリカをも示唆しています。Jordanとはヨルダン地方のことです。campgroundも故郷を意味するのですが、天国へ導かれたいという叫びともなっています。
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